小雨降りしきるロンドン。ビッグベンの尖塔が静かに見下ろす町。
1940年に起きたドイツの急襲は防備ままならぬイングランドを瞬く間に制圧したが、その時の傷痕はすでにすっかりと癒えていた。
ロンドン市民はいつまでも続くこのファニーウォーの行方はどこ吹く風、ヨーロッパはまさに平穏そのものだった。ヨーロッパ諸国において、すでに連合と呼ばれる国家に所属する国はなく、地中海は枢軸の手に落ちている。
中立を気取っていたスイスも、すでにない。”ドイツ”枢軸連合の中枢に刺さっていた最後の棘も、今や取り払われ、ブルガリアはソヴィエトとの内通によるドイツの背後攻撃に失敗、滅亡の憂き目を見る。
少なくとも、枢軸各国にはそのように伝えられた。
もはや、ヨーロッパに残る中立国は親独を標榜する北欧のフィンランド・スウェーデンの二国と、やはり同じく親独政権を立てているポルトガルだけだった。
その日も、ロンドンは霧に覆われていた。
「来たか」
男の顔に緊張が走る。男が今から臨むのは、一世一代の大勝負。テムズ河口に悠然と横たわるグラーフツェッペリンの巨躯と、ビスマルク級一番艦、ビスマルクの咆哮を轟かさんとするまでの威圧的な砲塔は今がドイツ占領下のロンドンであることをまざまざと思い知らされる。
男の前に、ひとりの男が姿を表した。ヨーロッパの王。すべてを手中に収めた男。
その体躯は決して大きくはないが、存在感においてはあまりにも大きなものだった。
「わざわざこんなところまで呼び出すとはね。久しぶりだな、モズレー」
「伍長閣下こそ。ご機嫌麗しゅう」
モズレーとよばれた男の後頭部に、鉛色の銃口の感触が押し付けられた。
「言葉には気を付けたまえ、ジョンブル」
「これは失礼」
モズレーは軽く笑う。
オズワルド・モズレー。反ユダヤ組織黒シャツ隊を率い、このイギリスでドイツの拡大路線に対し対話と協調を訴えた、”イギリスのファシスト”。
「チャーチルはどうしたね?」
「あんな腰抜けにあなたと話ができるほどの肝があるとでも思うのかい?」
「ふん、腰抜けでも”イギリス”の首相はやつだろう?」
くっく、と声を殺してヒトラーは笑った。
「”降服”と”寛大にて偉大なる慈悲”を求めるならばやつが自ら来るべきではないのかね」
「そうさな。しかし、今回私は降服も寛大なる慈悲も求めに来たつもりはない」
モズレーの言葉にヒトラーはわずかに口元をつり上げる。
「ほう…徹底抗戦かね。地球の裏、太平洋の島々を首都としたオランダと同じ道を歩んででも、イギリスは戦い抜く、と」
「それも違う。私は、一国の指導者として、対等の立場での会談を要求する」
「なんだと…?」
「要求は簡単だ。ブリテンの回復。アフリカの失地と、ブリテン島をわれらイングランドにお返しいただきたい」
バカげた、そしてあまりにも尊大な要求だった。
かちり、と後頭部に当てられた拳銃の撃鉄が起きる音がした。
「見返りは」
「ない。ブリテンの一部にドイツ軍の駐留を認めるが、それ以上の譲歩はない。スエズもお返しいただきたい」
「モズレー。君はアフリカに落ち伸びている間に頭がおかしくなったようだな」
「いたって冷静だよ、ヒトラー閣下」
「だとしたら、だ。君らジョンブルは滅びるべきだね」
モズレーは背中に流れる冷汗を務めて感じないように努力した。ここで、1歩でも退くわけにはいかない。彼には確信があった。それこそがヒトラーにとって最も良い選択である、という確信が。
「条件は、ない。ただ、それを容認していただければ、あなたが得るものはこのままの支配よりもはるかに大きい」
背を向け掛けたヒトラーの目が、再びモズレーをとらえる。
「話してもらおうか」
その日、ロンドンは霧に包まれていた。
大英帝国、ドイツに降伏。ドイツの慈悲により、グレートブリテンの大半と、スエズを含む旧植民領のうち、独立国家として独立していない地域をイギリスへ返還。
そのニュースは、当日のうちに世界を駆け巡った。ドイツの支配が非常に緩やかなものであり、ロンドンの破壊がほとんどなかったこと。1940年以降、ブリテンがほとんど戦争に巻き込まれていないこと。
ロンドン市民にとって、もはやドイツは敵であるなどという認識は薄れていた。
そこへきて、この慈悲深き決断。イギリス国民、ロンドン市民がこぞってヒトラーへの謝意を感じるに十分だった。
そして、この会談を成功させたオズワルド・モズレーの名は、一躍政治の世界に飛び出してくる。
大英帝国。ファシズムに則った、新しい大英帝国の誕生であった。
ドイツの傀儡ではない、一個の独立した国家として。
連合との決別を経て、大英帝国は再びヨーロッパへの帰還を果たしたのである。
政府首班に、腰抜けの貴族など掲げる必要などない。大英帝国は、かつてそのままにその力を示せばよいのだ。
われらの力はけして弱くなどない。
われらの手はけして短くなどない。
われらは負けぬ。屈せぬ。
そしてその決意は、新たなドイツ主導のヨーロッパにおいて、二つ目の頂点となろう。
ドイツだけではない。
ヴィシーフランスだけでもない。
ヨーロッパには、イングランドがなければならぬ。
ブリテンがあってこそのヨーロッパである。
大英帝国は、沈まぬ!
モズレーは聴衆を前にそんな演説をしたといわれている。
大英帝国が、ヨーロッパに帰還した。枢軸でも、連合でもなく。
この日、名誉ある敗北の日。新生大英帝国の新たな旅立ちの日となったのである。
「容認すれば、私は自ら率先しここにファシスト国家を生み出しましょう」
「なんだと!?」
「お任せください。私は、閣下の忠実なる尖兵。大英帝国海軍は、ドイツの矛先となり世界に穿たれる槍となりましょう」
「ふむ」
「復帰直後は中立を保ちつつも、一定期間後、お誘いいただければ喜んで枢軸参加となりましょう。英国、ドイツ、そしてフランス。ヨーロッパの覇王を生み出せし同盟。アメリカといえど太刀打ちできない枢軸を」
「ふん、まさに売国奴だな、貴様は」
「お褒めの言葉と受け取りましょう」
「いいだろう、その戯言、乗ってやる。バルカンの小物国家どものあさましい領土欲に辟易していたところだ。見せてみろ、大英帝国の野心をやらを」
「御覧に入れましょう。大英帝国の本当の力を」
伍長 で、イギリスを復帰させて戦争終わらせてハンガリーの同盟から抜けたのに枢軸に戻れなかった、と。
作者 えぐっ、えぐっ…ロンドンのICがあああああああ
伍長 結局セーブデータいじって直した、と…。
作者 こんなことなら地球のうらっかわまで追っかけてジョンブル皆殺しにすりゃよかったぁぁぁぁ!
電撃 なんかたくらんでると思いましたが…
白髪 まさかジョンブルと講和するとはな…
ふね …僕の出番激減の予感!
ロン で。ちょっと気になるんだけどさ。連合抜けても対日の戦争終わってないよね、イギリス。
電撃 ま、まさか…枢軸へ勧誘するって、まさか…
伍長 まさかの対日戦争、勃発でござる。の巻。
電撃 いやああああああ!また辺境はいやああああああああ!!!!!!
白髪 白い大地がああああああ!!!!!
伍長 お前らインド行きな。
電撃 あああああああ! また辺鄙なド田舎じゃねえかあああああ!!!
ロン ファシストvsファシスト国家ってシュールだなぁ…しかもかたっぽのファシスト国家は対米戦も対連合戦もやってるわけだけど。
垂目 いったい誰が敵で誰が味方なんだ…。
あのひと 枢軸が味方でそれ以外が全部敵じゃね?
何気に面白そうだから買ってしまおうか考察中・・・
面白いので毎日続きが楽しみです。
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陸戦ってなに?