それは宇宙開発元年とよばれた

ロシア。高大な凍土とシベリア、極寒の気候に支配された不毛の大地。
南部は中央アジアに達し、砂漠化が進み、北部は北極海に面して氷河が支配する。

その大地の大部分は人が住むべき自然に非ず、人口は東部ヨーロッパ方面に集中する。

そして、その国はその死の大地の下に数多の天然資源を有する資源産出国でありながら、その産地が人の住むべき環境にないがためにその多くは手つかずのまま放置されている。


その、ロシア西部。現ウクライナ共和国の近郊に、今だ手つかずのままの廃墟が存在する。
その名を、チェルノブイリ。

チェルノブイリ原子力発電所。

1971年に着工され、1978年5月に1号炉が営業運転を開始した、世界でも古い世代の原子力発電所である。

1986年4月26日1時23分(モスクワ時間)にソビエト連邦(現 ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が炉心融解、いわゆるメルトダウンを引き起こした。当時休止中だった4号炉で各種実験などを行っていた際に、制御不能に陥り、炉心が露出、核分裂反応が加速。
4号炉は暴走状態に入った。

この事件は、人災であったと言える。実験は不安定な臨界状態にあり、システム維持のため10%程度の発電機能を回しておく必要があったが、そもそもこの実験自体が炉心に不安定な運転状態を強要するものだった。もともと、チェルノブイリの原子炉は低出力での運転に向かない構造であり、低出力での運転は不安定になる原子炉であった。
さらには、実験開始の指令が遅れたため、炉内はキセノンオーバーライドの状態となり、核分裂を起こす中性子が極端に低下、出力は下がっていく。やむを得ず、出力を維持するため、制御棒を次々と抜いていった。

出力は増大したものの、制御棒が減ったことにより炉心の不安定さはさらに肥大。
実験開始時には、すでに制御棒のほとんどが抜き取られていた状態であったと言われている。

作業員はことここに至って最悪の判断を下すこととなる。

すべての安全装置の解除。
安全制御装置の制御を超えての操作を受け付けるよう、すべての安全機構をバイパスさせたのである。
そして、作業員は実験を続行。

その直後、炉心は異常な熱量増大を記録。作業員はすぐさま緊急停止措置を施し、制御棒の再注入を試みる。
しかし、これが最後の失敗だった。チェルノブイリ型は緊急停止を行うと一時的に炉の出力が増大してしまうのだ。
ただでさえ不安定であった炉心が、さらに出力を上げる。冷却水が瞬く間に蒸発し、大量の水蒸気が炉内に充満する。制御棒が降りていくが、制御棒が降りきるのが速いか、炉心が誘拐するのが先か。分裂反応の多大な連鎖が引き起こされれば、それはすなわち。

制御棒が、止まる。緊急停止を施して、その間わずか数秒足らず。

制御棒は下りきることはなく、炉心の熱量は測定機器の針を振り切る。
瞬く間に炉心にある高純度プルトニウムは連鎖分裂を引き起こし、弾き飛ばされた中性子は次の分裂を引き起こす。
炉心融解。メルトダウンである。

緊急停止を押してわずか6秒後。

大きな音とともに、炉心は大爆発を起こす。炉内に存在した大量の放射性物質は大気中にまき散らされ、それは高空の偏西風やジェット気流に乗り、北半球各地へと吹き流されるに到る。
原子力発電所事故の中でも、もっとも巨大な被害をもたらしたと言われる事故の一つである。
その後のソ連当局の動きの鈍さ、隠ぺいも手伝い、二次被害三次被害が拡大したのは、皆さんよく知るところ。

チェルノブイリとならび、原発事故で決して忘れてはならないのがTMI原子力発電所事故。
正式にはスリーマイル島原子力発電所事故だろう。
この二つは、原子力発電の歴史の中で、もっとも古く、そして最も大事な原子力発電の安全性確保の重要性をとみに知らしめる事故であったと言える。

その、チェルノブイリはいまだに鉛でおおわれ、誰ひとり立ち入ることは許されない。
周辺の汚染地域も、今だ立ち入りは深く禁じられている。

そして、その誰一人立ち入ることのできないチェルノブイリの中には、今は定期的に無人ロボットが内部調査に立ち入っている。

そのロボットが、驚くべきものを持ち帰った。

”生命体”である。

日光の届かない、暗闇の中。その”生命体”は驚くべきメカニズムでエネルギーを生成し、分裂し、増殖を開始していた。

【おそロシア】チェルノブイリで放射線を食べる菌が見つかる。宇宙で育てて食料にすればコロニー時代へ

タイトルで誤解しがちだが、彼らはコスモクリーナーではない。放射線を減らすわけではない。
放射線をエネルギー源として利用するのだ。日光の代わりに。

メラニン色素を充填し、紫外線からのDNA破壊を防止。そして、透過力の高い放射線のみを受け、何らかのメカニズムでエネルギーに変換したというのだ。
通常、植物性単細胞生物群は葉緑素のメカニズムで日光をエネルギーに転化する。

さしずめ放射素とでもいうのだろうか。

紫外線は低エネルギーで透過力も低いので、メラニンで吸着防御ができる。だが、いくらなんでもチェルノブイリ内部ともなればそこはガンマ線たっぷりの世界である。そもそも鉛で覆うのはガンマ線を外に出さないためだ。
αやβならそこまでしなくても透過は止まる。中性子線はすでに分裂が停止している以上残ってはいないだろう。

γ線による放射を浴びることを、一般に被曝という。レントゲン線(正しくはX線)もγ線の一種だ。

γ線もまた、細胞内の水分を強力に電離させ、電離したイオン対が塩基配列に作用して化学反応を引き起こすことで遺伝情報を欠損させる。
これが、奇形誕生のメカニズムとなる。これは、癌の発生とも連携する。

癌細胞については書いてたら本が欠けてしまうので割愛する。テロメアとか面白い話はあるけどね。
彼らが一体どんなメカニズムで放射線からエネルギーを抽出しているのかはこれからの研究課題となるとして、温度問題をクリアすれば彼らは宇宙ですら生活できることを示している。

宇宙ってのもまた紫外線と放射線だらけの世界だからだ。
生きてるうちに宇宙生存可能な生命体にお目にかかれるとはなぁ…。

0 thoughts on “それは宇宙開発元年とよばれた

  1. えーと、事故慣れしちまうと本当にルーチンワーク化して物事を処理してしまいますよ…
    ええ、ぶつけられたこと多々あり、ぶつけた事ありのわたしは既に事故起きたときの処理マニュアルがルーチンワーク化してしまってます。

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