これだよな、たぶん。なっつんのいう中日の社説。
ウィニー裁判 無罪判決は出たけれど
個人的な所感ですが。
それほど稚拙とは思わない。
踏み込むべきところには踏み込んでいるし、決定的な認識違いも見受けられない。
むしろWinny絡みの記事の中では比較的無難にまとめている部類に入るかと思うよ。
記事によっちゃ感情論を表に出して憚らないものも多いしね。
じゃ、全体をさらっと見てみようー。
判決骨子
焦点は、金子被告がウィニーをホームページ上に公開したことをどう判断するかだった。多くの利用者が画像や音楽などの違法コピーに利用。一審は悪用を容易にしたと認定し、著作権法違反ほう助で有罪とした。
しかし、大阪高裁は悪用する人間が出ることを認識しているだけではほう助に当たらず、悪用を勧めて提供する場合に限ると、ほう助の成立要件を厳格に判断した。一審の有罪判決には各界から「ソフト開発を萎縮(いしゅく)させる」などの批判があり、高裁が技術開発の自由に配慮したといえそうだ。
ここまでが今回の件の主要点。ほう助をどう扱うか、という点において、どう判断するか、というもの。
つかそれが当然と言えるのだけど、包丁を売ってたからと言って殺人ほう助には問えない、という当たり前のもの。
論旨としてあまり擁護口調ではないので、そう言った認識しやすい比喩を出してはいないものの、ちょっと考えりゃ理解できるレベル。
逆に「この包丁で憎いやつを一刺し!ヒトゴロシに最適な万能包丁!」ってPOPつけて売ったら同じ包丁でも当然殺人ほう助を疑われてしかるべき、っつーことです。
んで論旨展開開始。
だが、ウィニーによって何が起きているかをみれば、放置していい事態でないことも明らかだ。
ええ、実際そうです。ここまでで明確に反論できる要素なし。
数字の論拠はともかくとして
著作権団体の調べでは、ネット利用者のうち一割がファイル共有ソフトを利用。ウィニーで流通したファイルのうち48%が著作物で、そのうち97%が著作権者に無断で流出させたものだった。
また、ウィニーを通じコンピューターウイルスに感染して起きる情報流出も深刻。昨年度は流出事件の37%を占め、神奈川県の県立高校の全生徒十一万人分の個人情報が漏れたケースもあった。
著作権法は、著作物を無断でネットに流すことを禁止しているが、実際に摘発される例は少なく、年間三、四件のペースにとどまっている。無法状態がいつまでも放置されてはなるまい。
数字はまあ適当な数字出すことで有名な”著作権団体”とやらですから真偽のほどはともかく、まあむしろ48%しかないんですかと思ったくらいである。
本当はここで著作権法が親告罪であることなんかも踏み込むべきですが。あと年間3~4ってこたぁないと思うのだけど、これもわからん。データ調べてないし。
ま、とにもかくにもここも反論すべき点はない。Winnyネットワークの一部が無法であることは事実なんだから反論のしようもないw
まあ最終段くらいか。
ソフトの開発と公開に関してのルールづくりも検討したい。何よりも開発者自体が社会的責任を痛感してほしい。影響がはっきりするまで公開を限定するような慎重さが求められる。金子被告は「どう使うかは自由だが、ちゃんと使ってほしい」と述べている。利用者は著作権の重要性をいま一度理解すべきだ。
開発者に一定の責任を求める、ってのが最後に持ってこられて、ここが唯一意見の相違が出るとこだろうが、最終的に理解しなければならないのが利用者であることも明記されている。
要は、ソフトウェアに対してPL法に近い製造物責任を持てという話をしているわけだ。
じゃあ聞くが、と切り返せるのはここだけだな。
トヨタは自分の作った車が誰かを引き殺したらその責任を負うのか? といったらNoだろうね。
責任は運転者にある。
論旨は”そうじゃなくて”って話。
事故を起こしにくい車は作れるよね?って言ってるわけ。
そしてここが認識のミスリードの誘導を行っている点でもある。多少卑怯臭いがまあこの程度のミスリード誘導はメディアにとってはいつものことだし、その度合いもそれほどどぎついわけじゃない。
実際金子はキンタマ感染ファイルの拡散を防ぐ機能をつけること、それ自体は可能だと言ってるし、まあ可能だわ。
だが、事故を起こしにくい車だから、といって”運転者が人を引き殺す意思をもって通学中の小学生の列に突っ込むことは絶対に防げない”。
公開を限定せよ、ってのは要は”製造者にこの購入者が人殺しをする人間であるかどうかを見極める責任を負え”と言っているに他ならない。
この二点が全く異なる話なのだけど、その二つを同時に同じ段に展開し、なおかつ反論しにくい著作権違反だよね、ってのを置いておいたのは卑怯臭いよね。とは思うが。
トヨタは車売るときそんなことやってんの? 金とって売ってるモノですらやってないことを無償ソフトウェアに求めるわけ?
・違反することを目的にソフトウェアを”利用すること”。
と
・意図せずして何らかの問題を起こすことを未然に防ぐフェイルセーフを実装すること。
この二つは全く別問題だ。
世間様の認識はあくまで後者なんだよ。Winnyっつーなんかよくわからんソフトがあって、使うとゲームや音楽がゲットできる。でも”意図せずして”ウィルスに罹患する。
もうここまで行くと単にリテラシーの問題に過ぎない。利用者が”意図せずして”利用しているのだ、という前提を置き続けている限り、Winny他ソフトウェアにはあくまであらゆるフェイルセーフが求められてしまう。
要はPC初心者様の「何もしてないのにPCがおかしくなった!」って言ってるのと同じことを大声張り上げているわけだが、じゃあPC初心者様がみんな自力で治せるようになるべきか?ってーとそうは思わないわけだよ。
たしかに、PC初心者様が増えている以上、ある程度のフェイルセーフをもって、「何もしてないのに」という出来事を防ぐことは求められてくると思うし、それ自体は自動車の事故防止機能に過ぎない。
問題は、この「何もしてないのに」の認識レベルで「タダでゲームや音楽ゲットだぜ」が同列に存在していること、を重視しなければならないと考える。
そんなもんリテラシー以外のなんだっつーんだ。
人を殺しちゃいけません。
他人のものを盗んではいけません。
人が嫌がることをしてはいけません。
同じ話。
売ってる商品をただで手に入れちゃいけません。
そんだけのことなんだ。それが浸透しているかいないかってだけの話。ま、フリーソフトウェアやコピーレフト、パブリックドメインの存在がこの認識の徹底を難しくしているのは事実だけど。
悪いことを悪いと知っていてやっているのか、悪いことを悪いと知らずにやっているのか、って話でしかない。僕らは前者だろ、って立場で話してはいるが、たぶんに世間様は後者だと思ってるんだよ。
で、まあ後者ならフェイルセーフされるべきじゃね?って展開なんだ。
その展開方法は問題はない。間違ってもいない。だが、Winnyに関して言えばどう考えても利用者は前者なんだ。後者の善良な無意識のユーザーではない。
ま、後者だというならそれはそれでもかまわないが、ならそもそも情報教育の徹底と摘発時の厳罰化がまず叫ばれるべきだ。
真っ先にフェイルセーフが叫ばれるってのはおかしいよね?
運転がくそ下手なドライバーが小学生の行列に突っ込む事故が起きたとして、「運転免許の基準が優しすぎはしないか」ってまず言われるならともかく、まっさきに「自動車に小学生の行列認識装置があるべきではないのか」って論旨はおかしいよな。
実際今の自動車には歩行者識別だのがついてたりもする。それは「どんなに運転免許基準を高めても人はミスをする」という前提が立つからだ。だが、同時にそれは義務とはされない。
でも、どんなにリテラシを高めても人は悪さをする。
そりゃそうだが、それは悪いと知らずにやってるとは言わない。この二つは似てはいるが”ミス”と”故意”の決定的な差異がある。
Winnyに関して言えば”ミス”があり得るかありえないか、って論旨を展開すべきなんだ。
利用者の70%が”ミス”によってインストールされ、利用されているのだ、という話だったら当然Winnyはフェイルセーフされなければならない。
故意によっておこされているそれは包丁の人殺しではないのかね、という話だ。
まあ、全体的にミスリードの誘因は最終段くらいであとは事実の列挙ですね。最終段に関しても、まあ世間様の認識から言えばむしろ一般的とも言えるレベル。
それが一般的だから地裁が狂うわけだが。
僕らがすべきは一番簡単な「身近な具体例を挙げて反論する」ってのと、あとはその認識のずれへの警鐘と提言ではないのかな、と思う次第。
わざとやってる、と言うにはちょっとあざとさが薄い気はすんだよね。ACCSは明らかにわざとやってるけど。
それよりも、今日は月面衝突で、月の南極に氷はあるか?の実験がありますよっ、奥さんっ