世界はそれを馬鹿のあつまり、というんだぜ

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ネットワークのお仕事をしていると避けて通れないのがRFC。
Request For Commentsと呼ばれるプロトコル定義。いまじゃ標準化と言って差し支えないかもしれません。沙耶です。

みなさんがよく利用するメール、Webをはじめとし、おおよそネットワークに関してはほとんどのプロトコルをいちいち事細かに定義してくれやがってます。

Request For Comments、という名前から想像できそうですが、もともとは。

「おれっちこんなこと思いついちまったぜ！ｗ　発表するからぽまいら意見聞かせろよ！」

ってのが本来の趣旨だったわけです。んで、まあRFCは発表順にどんどん番号が割り振られていくわけです。
RFC792とかRFC1034なんて感じに。
ちなみに前者はpingなどで用いられるICMPと呼ばれるプロトコル。後者はドメイン名についての概念なんかを記述した文書です。

まあ、中には理想ばっかり先行してて実用にならねぇだろ！ってものも少なくは無いんですけどね。
さあて、今回は有名なネタですけど業界関係者以外はあまり知らないかもしれません。

今回はこのRFCの中でも読みやすいものを。

TCP/IPがパケットと呼ばれる小さなデータグラムに分割され、伝送経路を通って相手に届き、それを再構築しているものだ、ってことくらいはまあ知ってる人も知らない人もいるかもしれません。
パケットとか位の名前だけなら聞いたこともあるんじゃないでしょうか。

でっかい画像ファイルも、すごく小さなサイズのたくさんのデータパケットに分割され、相手に向けて送り出すんですね。
その小さな一つ一つをパケットというんだ、位に思っとけばいいです。

今回取り上げるのはRFC1149です。1000番台は結構古いRFCです。
ドメイン名の原理原則がまだ1034番なんですから。

タイトルを見てみましょう。

Network Working Group                                        D. Waitzman
Request for Comments: 1149                                       BBN STC
1 April 1990


A Standard for the Transmission of IP Datagrams on Avian Carriers

なに書いてあるのかさっぱりわかりません。
A Standard for the Transmission of IP DatagramsでIPデータグラムの伝送の標準化について、ということでしょう。
どんな伝送か、というとon Avian Carriersなんで鳥類伝送キャリア。

はいはい。カンのいい人はここらでもうニヤニヤしといてください。

翻訳した人がいるので適当に引っ張ってきましょう。

概要と理論

鳥類キャリアは，高い遅延性，低い処理量，及び低い飛行を提供すること
ができる．接続形状は，それぞれのキャリアによって１対１の経路に制限
される．早春以外の季節では，多くのキャリアを互いにそれほど干渉する
ことなしに使うことができる．これは１次元エーテル空間 IEEE802.3 (*1)
と違って，キャリアが３次元エーテル空間を使うことができるからである．
このキャリアは固有の衝突回避システムを持っているので，可用性を高め
ている．パケットラジオなどの他のネットワーク技術と異なり，通信は見
通し距離に制限されない．いくつかの都市では，接続指向サービスは有効
であり，普通は中心集中型の形状を基本とする．

<訳注>
*1: イーサーネット(Ethernet) の名前は，エーテル(ether) から
名付けられたそうです．
そのため，イーサーネットを１次元エーテル空間(1D ether)，
普通の空間を３次元エーテル空間(3D ether)，と表現している
ようです．

3次元エーテル空間。何言ってんですかｗｗｗｗｗって感じですね。
他の電波やノイズの干渉をほとんど受け付けず、1対1の通信ながら距離の制限はなく、
しかもパケットの衝突回避機能まで持ちうると。

フレーム形式

IP データグラムは，小さな巻き物に 16 進数で印字され，各々のオクテッ
トは白い部分と，黒い部分とで区切られる．巻き物は，鳥類キャリアの肢
に巻き付けられる．保証のため，データグラムの端をテープで止める．
帯域幅は，肢の長さによって制限される．最大転送単位 ( 以下 MTU ) は
可変で，一般のネットワークとは逆に，キャリアが歳をとるにつれ増加す
る．典型的な MTU は 256 ミリグラムである．いくつかのデータグラムは
パディングする必要があるだろう．

受信時には，テープを取り除き，紙に書き写されたデータグラムを光学的
に読み取り，電子転送ができるようにする．

そろそろこの馬鹿げた話の意味がわかってくるかと思うんですが。
MTUの単位がバイトではなく256ミリグラム。しかもキャリアは増殖すると。

議論

鳥社会の序列(*2)の優先順位によって，多くのサービスを提供することが
できる．付加特性として，組込み型のワーム発見及び除去機能がある．IP
は配送のために最大限努力をすることだけを保証しているため，キャリア
の紛失を許容することができる．時間があれば，キャリアは自己再生成を
することができる．ブロードキャスト(*3)は規定されていないが嵐(*3)は
データ損失を引き起こすことがあり得る．キャリアが疲れて落ちるまで，
再配送をあくまでやりとげる．診断用記録(*4)は，自動的に生成され，そ
して，ログと電線導板の上でしばしば得ることができる．

<訳注>
*2: pecking order は「社会の序列」と、「くちばしでついばむ順番」を
掛けていると思われる。

*3: 「ブロードキャスト」と「嵐」は，broadcast storm に掛けていると
思われる．

broadcast storm 【ブロードキャストの嵐】
n. ネットワークに間違ったパケットブロードキャストが流れ，
ほとんどのホストはそれにただちに応答するが，その応答が間
違っているためにこのプロセスがまた最初から繰り返されるこ
と． network meltdown を参照．
（ハッカーズ大辞典より）

*4: トレーラー（パケットの後ろに付くもの）と「足跡」を掛けていると
思われる．
また，ログは「記録」と「丸太」を掛けているのと思われる．

もういい加減にしろって話もありますｗ
ええ、もうお分かりでしょう。データを生成し、それを紙に印刷し、伝書鳩の足に巻きつけ、相手に向けて飛ばし、それを受け取ったらそのデータを目で見て読み取ってPCに入力する。

伝書鳩は現在地の記録などにぽとぽとと定期的に記録を残す。
ケツから。

パケットの中にワームなどの有害なものがあった場合、伝書鳩はこれをついばんでしまうので除去される。
誰も電気的なワームのことだとは言ってないですね。鳥なんだからワームがいれば食うだろうｗｗｗｗｗ

ただし、到達性の保証は無く、ベストエフォートです、とｗ
本当の意味で最大限の努力でしかないわけでｗ

ええ、まあ一番最初のヘッダ見てくださいね。
1990年4月1日。

RFCはエイプリルフールなどにはこういった馬鹿げたジョークも発表します。
インターネットなどの社会、それを作る組織は決して年老いた老人支配の現実社会ではありません。
若い人が、若い頭で、ユーモアと（アメリカンな）ジョークにまみれながらいまだ成長途中の組織ばかり。

ネットでエイプリルフールなどが盛り上がるのは、こんなバックグラウンドもあるんだよって知っとくと面白いかもですね。
ちなみに、2005年のエイプリルフールにはこんなのが出されました。

RFC 4041 「Requirements for Morality Sections in Routing Area Drafts」

2005 年のエープリルフール発行のジョーク RFC です。

最近の RFC やインターネットドラフトには必ず「Security Considerations（セキュリティに関する考察）」が含まれていますが今後は「Morality Considerations（モラルに関する考察？）」も付けましょう、という提案のようです。

もうひとつ、RFC4042もエイプリルフールです。ただ、こちらは専門的に理解してないと一見ジョークに見えないかもしれません。RFC4042でググってみて解説を読んでみて、「へーそんなもんもあるんだー」って素直に納得した人。

4/1のネット上の話を全部真に受けるのはどうかと思いますので、その日はインターネットをしないことをお勧めしますｗｗｗｗｗ

ああ、ひとつ言い忘れました。

RFC1149なんですけどね。
実際にこれで通信した人がいますから、実用性十分ですよｗｗｗｗｗｗｗｗ
pingしただけなんですけどねｗ

RFC1149実施
当日の写真や、Ping結果が出ています。Pingの遅延時間に笑えｗ
明らかにTCP/IPのタイムアウトを超過してるよっｗ

使用ソフトウェアも公開されているので、伝書鳩と通信相手がいるなら国内でも実施できます。

あと、後日このRFCのupdateがあり、QoS(通信品質の確保・向上のための技術)も導入されましたｗｗｗｗｗｗｗっうぇうぇｗｗｗｗｗｗｗｗｗ