ボーカロイドの著作権 1

ミクは何かといろいろ巻き起こしてるな。
一応画像はサムネイル一覧出始めてるけど、今度は著作権か。

もっともミクが悪いわけじゃないし、悪いのは今回は一方的にドワンゴだな。単に、大きくいろいろ巻き込んでしまうと、人間みんな善人じゃないし。
カネの匂いがすれば寄ってくる連中はうじゃうじゃいるってことだ。

今回の件でニコニコが、これまである程度の信念を持って対JASRAC的に動いていたという感覚は全くなくなった。結局ドワンゴは所詮ドワンゴだったってことだ。
これまでの著作権無視も、JASRACの行動への抗議的意味とか、そういうのは全くなくて、単にめんどくさいとかそんな理由だったってのははっきりしてきたわけだ。まあ最初からわかっちゃいることなんだが、いろいろ勘違いしてニワンゴドワンゴに妙な期待をしてた連中もいたみたいだしな。

たらこは神じゃねぇ。あれもただの金の魔力に取りつかれた一人でしかない。
お前らは期待し過ぎだ。

赤字なのは知ってるが、だからと言ってユーザーを踏みにじってCGMを主体にしたコンテンツが成り立つとでも思ってるのか。


まあニコニコの運営はニワンゴだって話もあるけどさ。
※着うた配信がドワンゴ

どっちも中身一緒じゃないか。カンパニーなんて紙一枚で仕立て上げれるんだし。まあ法人格としては別だから分けて考えろってのは理解できる。だが、同じ連中が運用していることを前提としてニワンゴを信じるか?って言われたらそれは別。

赤福が消費期限偽装をしてたけど小売やってる販売店は別会社です、うちで出してるお菓子は安全です!社長は一緒の人だけど!って言われて消費者がそれを納得できるか?ってことだよ。

さて、今回の騒動だが、JASRACはまだ何もしていない状態なのでJASRACに対してどうこう、というのは実はない。単にイメージの問題だ。特にDTMに古くからかかわっている人間でJASRACに自分の曲を登録したいと望む人間はそう多くないと考えている。あの、MIDI事件を僕は忘れない。僕らは、演奏権すらない、と定義されたのだから。DTMから離れたのもアレが原因だったんだし、その後DTMが日陰者の道を歩み続けたのもあの事件の影響が大きすぎる。

あの事件は、本当に多くのことを教えてくれた。当初はJASRACはDTMに対してある程度寛容な姿勢を見せ、DTMはそれなりに盛り上がった。「MIDIで楽曲をコピーすることは現段階では特に問題とは考えない。試験的に現状を看過する。将来的には分からないが。」ってね。そして、それはある程度広がったところで、いきなり梯子を外された。「いままでは大したことないから放置していただけだ、これからは厳格に取り締まる」とね。裏切り、とは思わない。だが、踏襲したステップがあまりにも急進的だった。

そして、数多のサイトが消えた。
身銭を切ってつづけるヒトもいた。だけど、彼がいくら頑張ったって彼には一円も入らなかった。
MIDIで楽曲を作るってのは、決して楽な作業じゃない。その苦労を知ってるからこそ、それは悲劇にしか見えなかった。
ある意味、二次創作活動として運が良ければ黒字にまでいける同人活動の方がよほど先が見えてた。
音楽は、ただでさえ商業音楽の低迷のあおりを喰らい、同人として発行しても低迷した。
それにとどめを刺したのが、mp3だった。

再現性の低い(もともとMIDIは再現性の高さを目指すものではない)MIDIは、原曲を可聴域に絞りこんで再現するmp3に淘汰された。と、同時に皮肉にもmp3はDTM作者の意図通りの音を聞かせる手軽な手段としては非常に利便性の高いものでもあった。
もともと、作者の意図通りの楽曲を聞くには作者と同じ環境を必要とするMIDIに、そもそも将来性があったのかと聞かれればそれは否だ。

結局、それを乗り越えて残ったのは最終的にプロを目指す連中や、引くに引けなくなるくらい投資しちゃった人たちで、数多くの裾野、にあたるライトユーザーは消え去ったに等しかった。
そして、その裾野潰しのトリガーを引いたのは、間違いなくJASRACだった。

以前よしの相手にFlash絡みで話してたことはある。裾野のなくなったDTMは限られた人間のおもちゃでしかなくなった。ライトユーザーを失えば、その分野はただひたすらマニアックな異常な趣味としてしかとらえられない。
もちろん、ライトユーザーがいなくなれば半プロみたいなマニア連中のハイレベル作品だけが拝める、って意見も分かる。だが、それはもう終わってしまった世界だと気づいてほしい。
PCだって、同じだ。誰もがPCの中身を知ってて、何をどうすればメモリが増設されるのか知ってるわけじゃない。何もわかんねぇけどこれ買えばインターネットできるんだな?って人が大半なんだ。
そして、そのライトユーザーという裾野は、マニアックに楽しむ趣味人にはウザいと思う一方、これほど大切な存在はないんだよ。これをウザい、というだけで切り捨てたら終わる。
先駆者は彼らにリテラシーを埋め込みつつ、適切に隔離しつつ、這い上がってくる道を用意してやらなきゃいけない。なんでそんな面倒なことしなきゃならんのだよ、スルーでいいじゃないかって思うかもしれないけど。

スルーした世界を僕は知ってる。UNIXって名前の世界だ。自助努力もしねぇやつをなんで助ける必要があるんだって公言してはばからず、Newsは教えて君で荒れた。いつしか、ぼくらは彼らにリテラシーを埋め込むことを放棄した。ダルすぎた。
気付いたら、ぼくらの周りには誰もいなくなってた。そして、初めて気がついたんだ。教えてくれよー教えてくれよーって馬鹿の相手をすることが、時間の無駄でありながらそれなりに必要なことだったと。
だから今、UNIXの世界はおおきな方向転換を余儀なくされている。GUIのデスクトップ? なんでそんなものがいるんだ?って僕らは思う。だけど、必要なんだ。要るんだ。それがなきゃいけないんだ。理由があるんだ。設定がどんどんブラックボックス化していじりにくくなっても。いじりたいやつは勉強していじるさ。だから、それが必要なことならやるしかないんだ。そして、それが必要なのは事実なんだよ。かつて切り捨ててしまったものを、もう一度戻すために。

彼らが存在して初めて、様々なアイデアと商品群が生まれ、そしてそれらは新しいライトユーザーをまきこみ、正方向へのスパイラルを生成する。
これを理解しておかないと、ユーザーの取扱いを間違える。いいかい、利権屋や様々な企業がターゲットにして、儲けを出すのはコアなマニアックユーザー相手の商売が主体ではない。そこは、儲からない世界だ。どれほど高額商品を作り上げ、マニアの心を満たしても、高かろう良かろうはさして儲からない。
儲かるのは、多売をかけれる部分、つまりライトユーザーだ。

ここに対して、どれだけ高値で押し付けられるか(言葉は悪いが、営利企業はこれを忘れたら終わるんだ)、如何に彼らを殺さずに絞れるか。そこのさじ加減なんだ。
そして彼らのうちのいくばくかはマニア層に移り、本当にいいものと高額なものに手を出し始める。それを作るための資本は、ライトユーザー層が支えるんだ。
これを、どれだけコンプライアンスを守った上で、そしてユーザーから愛されながら成し遂げられるか。それが大事だ。
どんだけ安くても、Yahoo!みたいに嫌われたらいつか堕ちる。

ライトユーザーを守ること、はその分野を盛り上げ、高めていくのには絶対的に必要なことなんだ。

これが喪失した瞬間にすべてが逆方向への負のスパイラルに転落する。
ライトユーザーを失えば、製造企業はその開発コストを十分に吐き出せなくなり、商品は劣化する。
この劣化を技術革新や量産効果で補えればまだ目はあるのだが、それがなければ劣化商品によってさらに裾野を失う。裾野が失われれば、開発コストに投じた金額はそのままマニア向け高額商品のさらなる高額化で賄うしかなくなる。最終的には、一部の金持ち趣味人だけが生き残るか、もしくは分野ごと死ぬ。

それを知ってるからこそ、僕は、今回のドワンゴの行為がそのトリガーになりかねないことを恐れている。
DTMはもう一回、あの暗闇に戻されなければならないのだろうか。
今回のブームは、ミクという架空存在を用いることで、映像面での裾野をまきこんで、一大巻き返しを図ったDTMの投じた一石だ。少なくとも、クリプトンの伊藤社長はそれをある程度認識していると考えている。
負のスパイラルを逆転させるのは並大抵ではない。そして、その業界に向けて投じた一石は、今大きな波紋になっていろいろなものを巻きこみ、渦巻きになって正のスパイラルに切り替わり始めている。

それは、ちっさな企業にすぎないクリプトンが仕掛けた、とんでもなく大きな野望だ。
伊藤社長の野望なのかもしれない。

だが、それを一時の目先のお金のためだけにトリガーを引きかけているドワンゴを信用する気には、もうなれない。
逆に今回の対応次第ではクリプトン伊藤社長の目指すもの、というのがよりはっきり見えてくると感じているので、こちらの対応は非常に期待しているところ。

だいたい僕らのJASRAC嫌いはあの時から始まってるんだ。今さらこっちだって引く気はねーんだよ。

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