ポジトロニウム。Ps。
本来マイナスの電荷を有するのが電子。プラスの電荷をもつものは陽子。
陽子の内部構造は中性子と素粒子からなる。細かいことはやらない。
さて。ポジトロニウムとは、何か。
ポジトロニウム。
マイナスの電荷を有する電子の反物質として存在するのが、プラスの電荷を有する電子。
これを、陽電子とよびます。
この陽電子は、マイナスの電荷をもつ通常の電子と衝突した場合、莫大なエネルギーを放射し、陽電子および電子双方が崩壊します。
この現象を、対消滅といいます。
これらは、別に妄想でもなんでもなくて、実験室レベルであれば確認されている実際の事象です。
反陽子は粒子加速器を使い、莫大なエネルギーを与えることで、生成されます。
問題は、即時にこのとき、周辺の電子と対消滅を起こしてしまい、崩壊してしまうこと。
観測そのものは成功しているわけです。
で、この陽電子と電子が、まるで双子星のように(旧来の化学でやった陽子が中心にあって電子がまわってる、というのとはちょっと違う)相互にバランスのとれた状態でぐるぐる回り合う状態を作ったときの原子名が”ポジトロニウム”、原子記号Ps。
電子と陽電子の組み合わせであるため、電荷的には完全に安定、物質質量も半物質であるが故に安定。このため、単原子でかなり安定している、準安定原子とされています。
原子って言えるのかどうかはよくわからんが。
もっとも、他の電荷に衝突すれば対消滅を起こしてしまうので、浮遊するこのPsをどう安定状態で保持するか、というのは悩みの種でもあります。完全真空中に置くにしても、浮遊してたらそのうち外壁にぶつかりますしね。
重力子、グラビトンの制御ができるまで、無理なんじゃないかと思ってました、沙耶は。
理論上では、H2分子のように、二つのPs原子を組み合わせてPs2分子をつくることができるのではないか、と言われていました。
ご存じのとおり、原子は原子そのものの状態ではほとんど安定しません。
原子は、原子が組み合わさってできる分子の状態を取ることで初めて、きわめて高い安定した状態に遷移することが通常です。
例外的なのはイオン化による単原子分離状態ですが、これもまた電荷のやり取りが行われた後の話ですから、電荷的には安定状態にありますし、イオン化していられる環境条件も要求しますしね。
だいたい、Psは電荷が打ち消し合う状態にあるので、電荷的には中性であり、これから電荷を奪ったり与えたりすると不安定になるだけです。
このため、PsはPsとしか組み合わせられないでしょう。しかし、それもまた現在まで実現の兆しはありませんでした。
★ できちゃった ★
今回、陽電子の強いバーストを多孔質シリカ薄膜に注入することによって、Ps2が孔の内部の表面で生成された。一層強い陽電子源を用いれば、Ps2分子のボーズ・ アインシュタイン凝縮体を作れるかもしれない。
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
かなりびっくり。ポジトロン分子出来ちゃったのか。ボーズ・ アインシュタイン凝縮体を作れるとなると、反物質の運用においても恐ろしいまでの前進。
ちなみに、反物質の対消滅時の放射エネルギーですが、
電子の場合を例に取れば、電子と陽電子(電子の反粒子。電子と同じ質量でプラスの電荷をもつ)が衝突すると、電子、陽電子それぞれの静止エネルギー(それぞれ511keV/C2)とそれらのもつ運動エネルギーの和に等しいだけのエネルギーをもつ光子が放出され、γ線として観測される。
というわけで、とっても単純な足し算。静止状態でのエネルギー相和はポジトロン原子で1022keV/C2。これにそのポジトロン原子の運動エネルギーの相和を加え、この相和エネルギーがフォトンとして放射されるのが対消滅。観測はγ線の発生をもってその観測とする。
これは何か、っつーとだな。とってもわかりやすく言うと。
重さを光に変換する、ということ。光、つまり光子でありフォトンでありそれはこの世界における物理現象の根幹であり質量ゼロである粒子であり波。すなわち素粒子。
物質の持つ質量と、その運動エネルギーの相和を、光子に変換する。
これは、質量ゼロの物質である純粋なエネルギー体である光に変換されているのだから、物質の質量が失われている。が、当然だが、エネルギーは保存されるので、その分が全部光のエネルギーになるわけだ。
1個の電子が持つ質量によるエネルギーは、上記にもあるように511kev/c2。
ここで出てくるのがかの有名なE=mc2ってやつです。
これは何かというと。
エネルギーは質量と等価交換できるよ!式であり、現実にそんなこと無理だよねでも理論上はエネルギーを変換すると質量に、質量をエネルギーに変換するときはこの式だよ!式。
そして、現実に起きるわけです。対消滅という形で。エネルギーと質量の等価交換が。
E=mc2をmを中心に書き換えると、m=E/c2。mってのは質量、Eってのはエネルギー。cは光速度のこと。
kevとは1エレクトロンボルトのことであり、エネルギー単位であるJに変換可能な単純係数。
mが質量であるなら、さっきの511kev/c2ってのはぼくらのいう1gとかと同じで。
重さの単位なんです、タダの。
あたまが痛くなってきたのでこの辺で吉野にパス。
簡単に言うと、対消滅を簡単に起こせるようになるかもしれない、ってこと。
もっとも、その素体のPs2つくるのに大手間とエネルギーが要るから、エネルギー源としての対消滅エンジンとかはちょっとまだ無理ですね。
ただ、Ps2を運用しやすくなると言うことは、とんでもなく高出力のγ線放射装置が制作できるということで…。
怖…っw