【恐怖体験】山で怖い思いした話はなすわ、オカルト方向で【長編】
うしみつさんとこの山話。
相変わらずいい話を見っけてくるなぁ。
ミハケ、ワガラ、食ってやる。女が四人も、か。
んで東北の秋田宮城岩手あたりの低山、黒い影はなまはげみたいで包丁なし、山奥の廃墟と。
とりあえず、迷い込んだのはマヨイガの類で間違いなさそうではありますね。人の塊をした球体、というのはなんだかあれですが、似たようなモチーフはいくつかほかでも見た記憶がありますが、なかなかにショッキングな形状でしょう。
最近のこの手の山話で似たような、といえば、山奥の開けた場所に死んだ動物が積み上げられていて一晩で消えた、みたいな話ですかね。
ざらっと読んだ感想としては、ミハケは猩々か狒々かな。怒り顔の地蔵、がよくわからない。これ、たぶん地蔵じゃないんだよね。地蔵菩薩を彫ったとしたら、それが祟るってのは簡単な事じゃないし、おそらく地蔵に見えただけで全く別のモチーフだったのだろう。
ワガラと名乗った老婆がこれにあたるのだろうけど、ミハケに仕えてる感じなのだろうね。どっちかっつーと山の化である狒々か何かに触発されてより高位の何かに進もうとしてる山の動物たち、が人まねして作った何か。だと思うんだよね。それを倒されたから怒ってるだけで。ただの修行のみしるしだと思うな。
実際に起きたオカルティックな現象よりも、どちらかというとその前後がキモだねこの話は。
実際のオカルティックな現象自体は神隠しの一端だろうし、山ならなんでもありやな。って感じでそこまで異常性を感じない。どちらかというと異常なのはその地蔵とマヨイガたる廃墟、そして最後の老婆。
ミハケの性質としてワガラが語ったのは
・人より賢い
・罠を張る
なので、猩々や狒々って感じではあります。いずれも女好き酒好き、知恵が回りずるがしこい。山の民はモノノケ連中ほど理不尽ではないしなぁ。異質ではあろうが。地域的に猩々が近い気もするけど、狒々も新潟などで伝承としてあるので、出羽三山に居てもおかしかあないね。
猿田彦や日吉に代表される猿神とは少し毛色が異なりそうだ。ただ、猩々はヤマに特化した存在でもないし、人と話もするし、好奇心の強い獣で、モノノケの類、というより会話する獣、なのだよね。
明確にヒトを食い、理不尽に襲い掛かるのはどちらかというと狒々。猩々の話では人間と問答して負ける、というパターンが多い。覚の物語のモチーフが猩々。狒々だとしたら現れる際に大きな笑い声なんかも定番なんだけど、読む限り、ミハケ自体は現れてないね。猩々はもっと気弱な化生のハズ。
マヨイガをゴキブリホイホイ、なんて言ってるけど、そもそもが逆で、マヨイガがワラガなのかミハケなのかしらんがそれらの棲み処なのだよ。昼間は無人で夜になれば彼らが帰ってくる場所。だから出ていけ、と老婆もいうわけだ。
そのまま残ればめでたくミハケの腹ん中。って感じなんじゃないかね。せっかくだから何か持ちかえればいいんだろうけど、そこまで余裕はないか。
雨やオカルティックな現象はまあオカルトサークルの人と同じかな。ただの仕掛けだね。糞尿でもばらまけば消えたんじゃないかと思うよ。まあ、若い男女に小便ぶちまけまくるなんてなかなか無理な話だろうが、せめて廃墟に入るなら不浄をばらまくべきだったかな。
呪詛なんかの類ではない。どっちかっつーと山の領域に踏み込んでしまった。ヤマノケの支配領域へ。マヨイガってのはもともとがそういう出自だしね。そも、山の神、なんてものは化生の進化形でしかない。神の中でも荒御霊の最たるもので、その理不尽さはことその支配領域の中であれば十全に発揮されるもの。
はてさて。山が特定できればもちっと民俗学的アプローチもあるのかもね。なんとなく秋田、宮城、岩手がフェイクじゃなくて、山岳部で初心者向けっつって上るっつーと百名山二百名山あたりかなぁ。栗駒あたりがビンゴっぽい気はしますね。
ま、もっとも栗駒はちょいちょい遭難者出してますけど。