後の先、とは剣術における思想の一つ。

一度動き出したら容易に剣の軌道は変更できない。すなわち、相手に先を取らせることにより、その動きをみたうえでそれを返し、なおかつ相手に反撃を許さない攻撃を仕掛けることにより、先手を取る、というなんとも非道な後だしじゃんけんである。

じゃんけんと違うのは先手の剣に対応が一瞬でも遅れれば死ぬのが自分だという背水を敷いていることだが。

沙耶です。


今の日本はこの後の先であふれています。
曰く、核ミサイルは撃たれてから対応する。
曰く、一発だけなら誤射ではないか。
曰く、人工衛星打ち上げおめでとうございます。

あいや、もとい。

さて、先日こんな事件があったそうです。
電車ががたごと。その車内で、恐るべき凶行が行われました。あ、レイプの例の奴じゃないですよ。

一人の男子高校生がおもむろに取り出したのは全長8インチのリボルバー。最も有名なのはコルトパイソン387マグナム 8インチモデルでしょうか。

彼は、おもむろにセイフティを解除、トリガーに指をかけ、乗客の一人にその銃口を向けました。
突如として起こった目の前の信じられない現実。
銃口を向けられた乗客の、背筋につたう生ぬるい冷や汗。

高校生はにやり、と笑い、そして、ためらうことなく、トリガーを

「何をしている！！！！！」
しかし、そこに居合わせた一人の警官。友人と飲み明かし、ほろ酔い加減での帰宅途中、居合わせた凶行の現場。
プライベートとはいえ、市民の安全を守るのがわが努め。ニューナンブも防弾チョッキもない、完全な丸腰でありながら、彼はその高校生に怒鳴りつけました。

高校生はにやにやと笑いながら、銃口を警官へ。そして、ためらいもせずに
トリガーを。

引きました。



銃口からはガスの燃えるようなにおい。青白く吐き出される炎。
「やーい、ひっかかったー！馬鹿じゃねーｗｗｗｗｗライターだよこれｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗビビってやんのｗｗｗｗｗｗｗｗかっこわりいいいいいいｗｗｗｗｗｗ」
げたげたと取り囲んでいた高校生数人が腹を抱えて警官を笑い、あざけります。

「お前ら…やっていいことと悪いことの区別も…ッ…！」
銃。その重厚なフォルムと存在感の有するモノの重み。それは、この国ではきわめて希薄。
もしここがアメリカであれば、警告もせずに高校生を射殺しても誰も批難しはしないでしょう。

この高校生の行為に、警官は心底、怒りました。当たり前です。馬鹿にされたことが問題なのではないのです。彼らが、銃というものの重みを理解せず、それを安易に人に向けたこと。
それが、何よりも、誰よりも苦しく、悲しかったのは彼らすら守らなければならない警官という立場の彼であったはずです。

考えるより先に、彼はライターを持っていた高校生の頬をはたきました。
人としてやっていいこと、悪いこと。そして、この日本という社会の中で、その平和と安全を誰かに守ってもらいながら、自分は安全でありながら他者を傷つけようとした彼の行為。それが、何よりも、誰よりも許せなかったのでしょう。


そして、彼は。警官は。逮捕されました。


さて。皆さんはどう思いますか。
私は、銃って好きです。でも、それが何であるのか、”何をするための”道具であるかも十分に知っているつもりです。
それを”人に向ける”という行為が、何を意味するのかも。

許されざるは、誰でしょうか。裁かれるべきは、誰でしょうか。

ちなみに、銃刀法には模造拳銃についての記述があります。当然、銃刀法は人に向けて使用することを禁じていますし、あらゆる面において他者への攻撃準備とみられる行為と、これらの許可のない所持、あるいは模造品などは目的なく所持、携帯することを禁じています。

★　警視庁のサイトより抜粋　★

どのようなものが「模造けん銃」の規制を受けるのですか？

　銃刀法では、
○ 金属製であること
　金属とは、金、銀、銅、鉄、鉛などの金属元素とその合金との総称です。

　従って、アルミ、亜鉛合金、鋳物などは該当しますが、プラスチックや木製のものは該当しません。
○ けん銃に著しく類似する形態を有する物であること
　「模造けん銃」 の規制は、けん銃との外観の類似性による悪用の防止を趣旨としていることから、一般の人の注意力では、その形態が本物のけん銃と区別できない程度のものであれば、これに該当することとなります。

　したがって、この条件に当てはまる物であれば、モデルガンやエアーソフトガンはもとより、文鎮、ライター、催涙ガス銃等であっても、模造けん銃に該当し、銃刀法の規制の対象になります。

ライターは金属製です。また、模造拳銃として、ライターも適合することが記載されています。
これらは、当然モデルガンなどと同様、商品にも記述されているはずです。

当然ですが。人に向けるのは、違法です。
さらに言えば、ライターそのものも、目的なく所持することは本来禁じられている商品です。
通常、ライターの目的は煙草などへの着火、あるいは花火、キャンプなんかの着火ですかね。
日常ではたばこくらいのもんでしょ。

高校生は、たばこ吸えません。ていうか吸っちゃダメです。

さて、彼は”何の”目的で所持していたんでしょうかね。
もし、彼が有していたのがターボライタータイプであったのなら、それは一種のガスバーナーです。ガスバーナーを人に向ける、というのがどういう事か、わからない人間が電車に乗り合わせてたりしうる、ということ。
ガスバーナーの燃焼域は基本的にほとんど視認できない炎色を示します。そのため、日常的にターボライターを使っていても、どこまで燃えているのか、はなかなかわかりにくいんです。

高校生の彼が、それを熟知していたと？　万が一、バーナーの炎先端が人体まで届いていれば、軽度の火傷で済む話ではありません。

傷害罪で警官を逮捕するならば。

この高校生は傷害未遂と銃刀法違反と危険物所持と軽犯罪法違反もろもろで逮捕してください。
それだけが、ぼくの、願いです。


ていうかこの餓鬼の親出てきて警官の前で謝罪としつけしてもらったお礼をしろ、ゴミ。
ちょっくら嘆願メールでも書いてこよう。銃が好きな人間として、心底腹が立った。