Sun、MySQLを買収。
オープンソースと商用型ライセンスの並行を行っているMySQL ABがSun Microsystemsに買収されました。これによる影響は直ちにはないでしょうが。
MySQLはかつてOracleからも買収を打診されていますが、その際は合意に至っていませんでした。
Linux+Apache+MySQL+PHP。俗にLAMPとよばれる環境。PostgreSQLを使うとLAPP、Windowsを使った場合はWAMPとかWAPPなどとも呼ばれますが、やはり一番通りがいいのはLAMPでしょうね。
安価、安定、定番といったあたりをかちっと固めたWeb向けサービスの環境をさした言葉です。
もともとMySQLはエンタープライズ向けの機能をある程度切り捨て、高速にinsert/update/selectをこなすように設計されたRDBMSで、オープンソースでDB2やOracleに並ぶエンタープライズクラスのRDBMSを目指すPostgreSQLなどとはちょっと毛色が違います。
かつてはそれで十分でした。しかし、Webインターフェースが浸透していくにつれ、MySQLの貧弱なSQL文環境と機能は、Webに配置されるデータ処理に不足を生じ始めているのも事実です。
これに呼応するために、MySQLはDBエンジンをテーブルごとに設定することでトランザクションや各種の機能サポートを提供してはいますが、これらのエンタープライズ向けのサポートではPostgreSQLが一枚上手、というのが沙耶の実感。正直、MySQLもMSのSQL Serverほどではないにしろ、多少方言がキツい一面がありますしね。Oracleが最高などと言うつもりもありませんが。
SQLが共通言語だなんて思ってるバカはたぶんいないとは思いますがw
現時点でPostgreSQLはVersion8を数え、初代のバークレーで生み出された40年前の思想を引き継ぎながらも(PostgreSQLはもっとも歴史のあるDBMSの一種です)、非常に高いスケーラビリティを有していると思ってます。
正直、確かにMySQLは速いです。特にMyISAMエンジンの速度はPostgreSQLじゃ絶対に出せません。
ええ、単体のサーバ同士でやりあったらね。
DBクラスタを構築しなければならなくなってくると、MySQLはとたんにその機能不足を露呈します。
双方向レプリケーションは一応有料で有してはいるものの、そのスケーラビリティにおいて確実に一歩遅れていますし、大容量のデータの処理のほとんどを高速化のために無理やりメモリ展開するため、ある閾値を超えた瞬間に半端ないSWAPを発生させます。
正直、これが鯖管にとっては一番どうしようもない。解決法がメモリ増設かDBの中身を削るしかないってふざけた話で、わりとMySQLはランニングにコストがかかるRDBMSな気がするんですよね。
PostgreSQLももちろん大量のメモリ展開を行いますが、ここまでひどくない気がします。だいたい、金かけて拡充していいならPostgreSQLならサーバ代だけで双方向レプリケーションクラスタ組めますし、バランサからノードエンジンから全部揃いますしねぇ…。
MySQLの双方向レプリって使ってないですけど、どのくらいのスケーラビリティがあるんでしょうね。
Web上のデータがでかくなればなるほど、トラフィックが大きくなればなるほど、MySQLでは限界が速くに見えてきてしまって行き詰ってしまう気がしてならないわけです。
さて、そんなMySQLをSolarisのSunが買うってことにまず驚きました。まあPostgreSQLはコミュニティにすぎないので支援はできても買えませんから、まあ買うならMySQLしか買うもんはないわけですが、これが何を目的としているのか、今ひとつ見えないとこがあるわけです。
MySQLもVersion5を数え、最近ようやくSQL99に追従してきましたが(いままでがSQL97って時点でアレな気もしますけど)、世間のRDBMSはすでにSQL2000への準拠が押し進んでるとこだったりします。
エンタープライズ市場がメイン戦場であるSolarisにとって、MySQLの上限の低さは武器にするにはちょっと心もとない武器のように思えます。
なんたって、相手はDB2とかOracleになるわけです。ミッションクリティカルな戦場で、MySQLなんて、現時点では武器にならないはずです。どうするんでしょう。
ひとつは、大幅な方針転換。これは確かに有効かも知れませんが、MySQL開発陣にかかる負荷は洒落にならないでしょうね。
SQLite作ってるつもりだったらOracle作らされてた。みたいな話ですし。まあ、最近はMySQLもだいぶエンタープライズ向けにシフトしてきてはいるんで、将来性を買ったのかもしれませんが。
もう一つは現状維持。というかSolarisとの親和性を高め、サーバと言えばSolaris。のあの時代をもう一度。という夢なのかもしれません。
かつてサーバと言えばSolaris、Solarisと言えばサーバ。みたいな時代がありました。Solaris2.1から2.6までを輩出した90年代。とくにその後半戦。
Sunはサーバプラットフォーム市場を完全に独占したと言って過言ではなかったのです。
しかし、Sunはそこから迷走。統一プラットフォームとしてのJAVAに傾注しましたが、思いのほか伸び悩み(思想はともかく重すぎたw)、いくつかの先進技術への追従が遅れてしまったことなどにより、市場支配力を失っていきます。
折からのLinuxブームも手伝い、Solarisといえば難解、といったイメージが付きまとってしまいました。
※実際は所詮POSIXなんすけどねw GNU慣れしてるとちょっと戸惑うかもw
しかし、今でもSolarisの安定性ってのはLinuxの比じゃないなぁ、と思うことはしばしばあります。
さてさて、LAMPやLAPPはSAMPやSAPPで置き換えられるのか!?
無理だろうけど。
それはそうと、OpenSolarisけっこう頑張ってるみたいですね。私は素直にSolaris引っ張ってくる派ですけど、サードディストリビューターも出てきてるし、OSFの様々な技術のフィードバックも割と順調みたいで。
もともとそれほどでかい会社じゃないので(>Sun)、もう一歩速くOSFの技術者を取りこめていたら、もうちょっと違う世界があったのかもしれません。