春はオカルト。

ようやく白くなり行く山際を見ながら、結局一晩中眠れなかったな、などと考えながら、一晩中鳴らされたチャイムを思うと恐ろしくてドアが開けられないのはとても怖い。まどの外に紫色の雲が広がってるのも異世界風でキモい。あとなんでまどに張り付いた顔があるのかわからない。

夏もオカルト。月の頃は言うまでもなく、闇夜も恐ろしい。蛍のように飛び交う人魂のひとつふたつ行きかう様は、誤った道へと誘い込んでいるようで恐ろしい。かといってじゃあ無数に飛んでいればいいんだろってそんなわけあるか。

秋もオカルト。夕闇迫るなか行きかう人が誰であるかもわからない、黄昏の中で誰そ彼そと声を掛け合うのは、時折返事が返ってこなくて恐ろしい。山の端ではカラスが群れており、不気味な鳴き声を上げているのは、まるで死体に群がっているかのようだ。まして雁などが、遠くに小さく、いやなんだあれはなんという数だ!これじゃヒッチコックだ!やめて!早く家の中へ!
飛び込んだ家の中で、まどにぶつかる鳥達の音は実に恐ろしい。ていうかガラス割れた!いやあああ!入ってくる!!!

冬もオカルト。え? 秋で死んだんじゃないかって? 何言ってんだよいやだなぁそんなこと起きてないよ。早朝、もうすぐ鶏の声で朝が知らされるというのに、部屋の温度が上がらない。お坊さんは朝が来るまで何があっても部屋から出るなと言っていたけど、この寒さはおかしい。誰かが呼んでいる。もう朝だよって言ってる。雪の音がする。誰かが霜柱を踏みしめてる。誰が。どうしてここに。誰がいるの。あわてて火をおこして、炭をおこしてもちっとも暖かくならない。炭火が白くなっていくのは、なんとも心もとない。はやく、はやく鶏が鳴けばいいのに。
やがて聞こえた鶏の声ほど、救われたものはない。喜び勇んであけたまどの向こうは常闇。にぃっと笑う顔。ああ、嘘だったんだ。そう知るときは実に恐ろしい。

沙耶です、こんにちは。あなたの隣に超常現象を。
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