小雨降りしきるロンドン。ビッグベンの尖塔が静かに見下ろす町。
1940年に起きたドイツの急襲は防備ままならぬイングランドを瞬く間に制圧したが、その時の傷痕はすでにすっかりと癒えていた。
ロンドン市民はいつまでも続くこのファニーウォーの行方はどこ吹く風、ヨーロッパはまさに平穏そのものだった。ヨーロッパ諸国において、すでに連合と呼ばれる国家に所属する国はなく、地中海は枢軸の手に落ちている。
中立を気取っていたスイスも、すでにない。”ドイツ”枢軸連合の中枢に刺さっていた最後の棘も、今や取り払われ、ブルガリアはソヴィエトとの内通によるドイツの背後攻撃に失敗、滅亡の憂き目を見る。
少なくとも、枢軸各国にはそのように伝えられた。
もはや、ヨーロッパに残る中立国は親独を標榜する北欧のフィンランド・スウェーデンの二国と、やはり同じく親独政権を立てているポルトガルだけだった。
その日も、ロンドンは霧に覆われていた。
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